Scene.3-2



 ゴールデンウィーク明けの夜。

 私はモヤモヤした気持ちのまま、真琴ちゃんとテーブルを挟んで向かい合わせに座っていた。

 お店は小さいけれど、内装が綺麗で料理のレベルも高いイタリアン・レストラン。

 パスタもピザも美味しいし、デザートのアイスクリームも絶品。

 の筈なのに……あまり、味を感じない。美味しく、ない。

 食後の紅茶のカップに映る不安げな自分の顔を、ぼんやりと見つめていた。

「……芽衣?」

 真琴ちゃんの声にハッと顔を上げる。

「あ……」

 いけない。まただ。

「ごめんね、聞いてなかった。何?」

「もう、芽衣。しっかりしてよ。さっきからずっとその調子じゃない」

 今日何回目かの遣り取りに、真琴ちゃんも呆れているみたい。

 綺麗に描いた眉を下げ、心配そうな視線をくれる。

「……ごめんね」

 申し訳なさでいっぱいになって、思わず顔を俯けた。

「……芽衣の誕生日のこと。そろそろでしょ?」

「あ、うん……」

 そういえばそうだ。

 すっかり忘れていたけど、もう直ぐ私の25回目の誕生日、か。

 真琴ちゃんはいつでも私の事を心配してくれる。

 自分の事のように、親身になって―――。

 
『……やっぱ、付き合ってンのか。高遠と真琴センセ』

 
―――――――。

 あの朝の、椎名君の声が蘇る。

 そんな筈ない。

 真琴ちゃんは、私と高遠先生の仲を応援してくれているんだもの。

 その真琴ちゃんが、高遠先生と付き合ってるなんて。

 『何でそー言い切れンの?』

 
責めるみたいにして、また椎名君の声が頭に響いた。

 ……だって、私と真琴ちゃんは、小学校の頃からの親友なの。

 だからきっと、真琴ちゃんは私を裏切ったりしない。そんな子じゃない。

 けど―――。

 
『いくら同僚って言っても、オトコの部屋にオンナが泊まる時っていうのはそれなりの関係があンじゃない?』

 
解ってる。

 そんなことは解ってるの。

 どんなに考えても理由が見つからない。

 真琴ちゃんが、高遠先生の家に泊まった理由が。

 共同授業? ううん、そんなの不自然。真琴ちゃんだって高遠先生と同じ、成陵周辺に住んでるんだから。

 じゃあ、何?

 
それなりの関係』

 
意地悪な声音が、耳の直ぐ傍で何度も響く。

 
二人は『それなりの関係』だっていうの?

 ………恋人同士?

 嘘よ。

 真琴ちゃんに限って、そんなことする筈ないもの。

 あぁ、頭の中がぐちゃぐちゃしてきた。

 メビウスの輪のように、何度回っても出口の見えない無限回廊。

 それは何処か底なし沼にも似ていて、足を取られて身動きできなくなっていた時、ふと妙案が浮かんだ。

「あのね、真琴ちゃん…」

「何?」

 真琴ちゃんは笑みを含んだ表情で聞いてくる。

協力して欲しい事があるの」

「うん、何々? 何でも言ってよ」

「私の誕生日に、高遠先生と二人で食事がしたいの」

「え?」

 真琴ちゃんの声のトーンが変わったのが解った。

 きっと、私の申し出が意外だったんだろう。

 自分でも、らしくないと思いながらの発言だったけれど……。

 でも、これは多分、神様からの合図なんだと思う。ううん、思うことにした。

 高遠先生に気持ちを伝えなさいっていう、合図だって。

 決意が鈍らない内に、私は早口に捲し立てた。

「私ね、やっぱり高遠先生に気持ちを伝えたい。真琴ちゃんに全部頼ってばっかりじゃ悪いし……自分でも、動かなきゃって思ったの」

 何故、もっと早く思いつかなかったんだろう。

 知恵の輪を解いたような心地よい感覚が身体を支配する。

 そうよ。これで真琴ちゃんが快く応援してくれれば、高遠先生とは何の関係も無いって解るし。

 何より――もしかしたら、私の気持ちが高遠先生に通じるかもしれない。

 微かな、微かな希望を伴った瞳で、真琴ちゃんの返答を待った。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 真琴ちゃんは慌てたようにストップを掛ける。

「何?」

「えーと……あのね、芽衣。男の人を2人っきりで食事に誘うっていうのは、変な意味に取られちゃうかもしれないよ?」

「変な意味って?」

「例えば、その、一晩一緒に居てもいい、みたいな……」

 私の為に大分言葉を選んでくれてるのが解る。何時もの何倍も慎重に、真琴ちゃんが言う。

 でも、その心配には及ばない、と思う。

「わ、私はそれでも……構わないけど」

 私が発した答えに、真琴ちゃんは口を開けて露骨に驚く。

 ――本音だった。無理しているつもりも全く無い。

 もしかしたら、心の何処かで、

 
『センセ、ショジョなんでしょ?』

 
っていう椎名君の言葉に、コンプレックスを煽られてたからかも知れないんだけど……。

「だからお願い、真琴ちゃんは高遠先生と授業持ってるし、もしよければ誘っても良いかってことだけ確認取って欲しいの。

ほら、予定とかもあるでしょ。ね、お願い」

「芽衣……」

 ちょっと図々しいかな、とも思ったけど、真琴ちゃんを疑いたくないから―――これしか、方法が無いの。

 ごめんね、と内心手を合わせながら頼み込んだ。

「芽衣、それはできないよ」

 困ったような、悩むような表情で真琴ちゃんが言う。

「どうして?」

「どうしてって……それは……」

 ついには黙り込んでしまう。

 ……どうして、そんな辛そうな顔をするの?

 違うよね? 高遠先生とは、何でもないんだよね?

 不安という二文字が、どんどん私の中で膨らんでいく。

「もしかして真琴ちゃん……高遠先生のこと、好きになったの……?」

 否定して欲しい一心で、私は訊ねた。

「ち、違うよ!! そんなんじゃないよ!」

 焦ったように直ぐ、真琴ちゃんが首を振った。

「……わかった。高遠先生に話してみるね」

 それから、観念した様子で真琴ちゃんがやっと、頷いた。

「ありがとう、真琴ちゃん。本当にありがとうね」

 ホッとした私は、頭を下げながら微笑んでみせる。

 ―――けど、私は心の中に潜む卑怯な自分を嫌悪していた。

 『真琴ちゃんは、高遠先生を好きになったの?』

 その台詞が、彼女を動かすことが出来ると何となく気づいていたから。

 そして、少なからず図星をついているかもしれないという、新しい疑惑を生み出すだろうということも……。

 そうじゃないの。真琴ちゃんを疑いたい訳じゃない。追い詰めたい訳じゃない。

 ただ、安心したいだけなの。

 ……高遠先生が好きなだけなの。

 だからお願い、真琴ちゃん。私を不安にさせないで。

 親友の憂いを帯びた顔が、暫くの間、瞳の奥に焼きついて離れなかった。


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「月島先生、今少しお時間宜しいでしょうか」

 真琴ちゃんに無理なお願いをしてから数日が経った頃。

 授業の合間に職員室で楽譜の整理をしていると、突然、声を掛けられた。

「は、はいっ」

 直ぐにそう答えながら、私の肩が驚きに大きく揺れた。勿論、嫌悪感を覚えた訳ではなく、その逆。

 声の主が大好きな高遠先生だったからだ。

 彼の方へと身体を向けながら、私は続けた。

「え、と……何でしょう?」

 訊ねながらも、何となく予想はついていた。

 きっと真琴ちゃんが、約束どおり私の「食事をしたい」という意志を伝えてくれたんだろう、と。

「千葉先生からお話を伺いました。今度、お誕生日なんだそうですね?」

「は、はい」

「もしご迷惑じゃなければ、何か美味しいものでも食べに行きませんか?」

 高遠先生は、何時もの、優しくて穏やかな笑みを向けてくれる。

「あ、はい、迷惑だなんて! ……こちらこそ、お願いします」

 やだ、緊張で変な風に声が震えちゃう。

 自分で頼んだこととは言え、思い描いていた願い事が現実になってしまうと、どんな顔したらいいのか解らないよ。

 舞い上がってしまっているのか、顔が強張って表情筋が動かない。

 けど、嬉しいという感情は、何度も何度も頷くことで示すことが出来たみたいだった。

「では、お店は調べておきますね。幾つか見つけてまた月島先生にご連絡します―――ああ、メールアドレス、お聞きしても良いですか?」

「はい、勿論です」

 結局その場では、互いにメールアドレスを交換して、詳しいことはまた後日という話になった。

 短い遣り取りを終え、次の授業のため再び音楽室へと向かう足取りは非常に軽やかだ。

 ―――だって嬉しい。

 嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい。

 あの高遠先生と、ついにメールアドレスの交換が出来るなんて!

 夢を見てるみたい。

 連絡先位で大袈裟だって思われるかもしれないけど、これは大変なこと。

 何しろ、男友達と呼べる人物が0に近い私の携帯電話のメモリーに、大好きな高遠先生のデーターが入るんだから。

 ……彼のアドレスを空で書けるようになったらどうしよう、なんて、妙な心配もしてしまう。

 だから今の気分は最高潮に良かった。

 例え、この後の授業が椎名君と二人っきりの個人レッスンだとしても。

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「何かあった?」

「え?」

 授業を開始して直ぐに、椎名君が怪訝そうな顔でそう訊ねてくる。

「センセ、すげェニコニコしてンじゃん」

「そうかな?」

 何でもないように誤魔化してみるけど、彼にはお見通しみたいだった。

 隠そうとしたって直ぐに顔に出てしまうのだから、どうしようもない。

「ま、いーンじゃね? 楽しいコトがあったンならさ」

 言葉と表情が咬み合っていない。気に食わないとでも言いたげに、舌打ちをする彼。

 あまりの嬉しさに忘れかけていたけれど、彼とは先日、とても気まずい別れ方をしたんだったということが頭を過ぎる。

 同時に、彼が高遠先生の弟であること、

 彼が高遠先生を嫌っていること、そして―――。

 『どうせセンセにとっては、オレにヤられかけたことより、怜が他のオンナと付き合ってるかもしれないってコトのがショックなンだろ?』

 
あの言葉が蘇った。

「……ごめんなさい」

「は? 何でセンセが謝ンだよ」

 イライラした声音が返ってくる。

 自分でもどうして謝罪の言葉が出たのか、解らなかった。

 私が彼に謝らなければならない理由なんて無い。寧ろ、私がもう一度謝ってもらいたい位なのに。

 『私にとっては、椎名君に迫られたことより、高遠先生が他の女性と付き合ってるかもしれないって事の方がショックだ』

 …………。

 それを、認めてしまっているから、なんだろうか。

 そりゃ、椎名君に襲われかけたことだって凄く怖かったけど、高遠先生と真琴ちゃんのことを聞いたときの衝撃は、相当なものだったし。

「……ううん」

 ダメ。そんなことを考えてたって何にもならない。

 高遠先生とじっくり話せる時間だって貰えたことだし、今は授業に専念しよう。

 私は、音楽室の扉がきちんと閉まっていることを確認しながら、彼に座るように促した。

 教室の中央には、六列×六列=三十六名が座れる、テーブルが畳めるタイプの椅子が並んでいる。

 彼は緩慢な動作で、ピアノ側に近い一番前の席に腰を下ろした。

 綺麗に染まった茶髪が良く見える。いつもは私が彼を見上げて会話をするのだけれど、今は逆。

 ピアノの前に立つ私の瞳を、彼は視線だけ上げて見つめて言った。

「ちなみに、どんなイイコトがあったワケ?」

「………」

 それを椎名君に答えようという気にはならなかった。

 だから、何も耳に入らなかったかのように、なるべく無表情を心がけて言った。

「今日はドヴォルザークのCDを聴いて貰おうかと思ってるんだけど」

「何があったの、センセ?」

「………」

 彼の性格は理解してるつもりだ。私がはぐらかす限り訊ね続けるんだろう。

 だから無意味な言葉の応酬は割愛することにした。

「何もないわ」

「ウソだろ。口緩みっぱなしだぜ」

 反射的に、片手で口許を覆った。

「センセ、ウケる。隠しゴト超ヘタ」

 くく、と喉を鳴らしながら、椎名君が笑う。

 ううう……素直に反応してしまう自分が、情けないなぁ。

 無邪気に笑う彼の顔を眺めながら、以前感じたデジャヴの正体に漸く気がついた。

 そうだ。高遠先生の笑った顔に似てるんだ。

 兄弟と聞いた後では、余りにも簡単すぎる答えのようにも思えた。

「―――高遠?」

 不意に笑いを止めて、彼が紡いだ言葉に心臓が跳ねた。

「やっぱ高遠ガラミか。解りやすいな」

 私の表情の変化を見逃す筈も無い。探るまでも無く詰まらないとでも言いたげに、彼が溜息を吐く。

 ……こうまでも単純な自分が嫌になってしまう。

「で、何? 高遠に付き合ってくれとか言われた?」

「ち、違っ……」

「そりゃそーか。そんな度胸、アイツにあるワケないし」

 否定すれば、椎名君は今度、あはは、と可笑しそうに声を立てて笑う。

 高遠先生を擁護したい感情に駆られるけど、きっとそれを口にしてはいけないんだろうとも思った。

 私だって馬鹿じゃない。先日彼が不機嫌になってしまった原因は、其処にあること位気づいている。

 だから余計なことは一切紡がず、黙って彼の反応を窺っていた。

「………」

「ね、センセ」

 徐に、椎名君が口を開いた。

「何?」

「オレじゃダメ?」

「え?」

 一瞬、如何いう意味なのか理解できずに、言葉を忘れた。

 そんな私を他所に、彼は更に耳を疑うような台詞を続けた。

「高遠じゃなくて、オレにしなよ」

「何を?」

「だから、コイビト」

 私は少々わざとらしく溜息を吐いた。

 また始まった。こうやって、他人をからかって何か楽しいって言うんだろう。

 その手に引っ掛かるつもりなんて無いから、私は緩く首を振る。

 そして、なるべく余裕をたっぷり保った言い方で

「そうね、椎名君が成陵を卒業しても同じ気持ちなら、検討させて貰います」

 なんて切り返して見た。私だって、やろうと思えば出来るんだから。

「センセ、本気にしてないでしょ」

「してますよ。だから、卒業してから――」

「そンなのカンケーねェじゃん。センセと生徒が付き合っちゃイケナイなンて法律、ドコにある?」

 宥めようとする私に、不愉快なオーラを隠すこともせずに口を尖らせる。

 何故、椎名君はそんなにむきになってるんだろう。

「ほ、法律は、無いかもしれないけど、でも常識的に考えたら、そんな――」

「じゃ、どーしたらオレと付き合ってくれンの?」

 ガタン。

 椎名君が立ち上がって、視線の交わる位置が一気に高くなった。

 とても冗談とは思えないような、真剣な眼差しを向けられて、私はただただ狼狽する。

 何だか、怪しい雲行きになってきた。

 手を伸ばせば、互いに触れることが出来る距離。

 先日のこともあり、彼への警戒は怠らない。

「待って、落ち着いて、椎名君」

「センセ、オレ、センセのこと好きなンだ」

 ……。

 …………。

 ………………。

 ええええええええええええ!??

 何?

 何て言ったの??

 私の聞き間違いじゃなければ、彼は、今。

 とんでもないことを口にしたような。

「し、椎名君―――」

「ずっと前から好きだった。高遠なンかに渡したくない」

 驚きでガードを解いた次の瞬間。

 彼の力強い腕が、私の身体を包み込んでいた。

「やっ……離してっ」

「離さない」

 腕の中でもがいていれば、彼の纏うコロンの香りが鼻を擽る。

 それが妙に恥ずかしくて尚更距離を置こうと彼の胸を押すけれど、男の子の力には敵わない。

「オレ、ホンキだよ。この間は、あンな風になって――襲ったみたいになって、悪かったと思ってるけど」

 襲ったみたい、じゃなくて、襲った、じゃない!

 混乱した頭の中でも、そういう如何でもいい部分はしっかり訂正できる自分が滑稽だ。

「去年、センセが着任してからずっと好きだった。だから、高遠なんてやめて、オレにしなよ」

 耳元で甘く囁かれる言葉に、顔から火が出そう。こんな台詞、生まれて初めて聞いたものだから、どう答えていいのか解らない。

 彼の速まる鼓動が体温と共に伝わってきて、余計に反応に困る。

 『何してるのよ』

 すっかり身動きの取れなくなった私へと、もう一人の『私』からの叱責が聞こえてくる。

 『貴女は教師なのよ?』

 『生徒に対して、毅然とした態度すら取れないで、どうするっていうの』

 それに――。

 『貴女は高遠先生が好きなんでしょう?』

 !!

「椎名君、お願い、離して」

「嫌だ」

「椎名君!! ――――離しなさいっ!」

 頑として離れようとしなかった彼を、厳しい声音で……教師の声で、制する。

 彼は異なものを感じ取ったのか、渋々といった様子で私を解放して、2人の間には先程と同じ距離が戻る。

 動揺に弾んでいた息を整えてから、私は極力静かな声で告げた。

「貴方の言うとおり、私は……私は、高遠先生が好き、なの」

「………」

「貴方がもし、本当に私のことを好きだと言ってくれても、その気持ちに答えることは出来ません」

「………どうして」

 理由を説明しても、まだ椎名君は納得できない様子だった。

 それは駄々を捏ねる子供のようでもあり、捨てられ掛けた子犬のようでもあり、胸が痛まない訳でもなかったけれど。

「どうして高遠は良くて、オレはダメなンだよ?」

「………」

「何でいっつも―――怜ばっかりッ……」

 彼の表情が、苦しげに歪んだ。けれど、それもほんの僅かの間のこと。

 その様子が気になり声を掛けようと口を開いた頃には、常の意地悪げな笑みを浮かべていた。

「―――いーよ。怜のだって言うなら、センセがもっと欲しくなってきた」

「……え?」

「ゼッタイ、センセにはオレのコト好きになって貰うから――覚悟して?」

「………ええ?」

 話はそれで終わり、とばかりに、彼は大人しく席に着いて、珍しく自分から授業モードに入ってくれた。

 まだ話を飲み込めていない私のことなんてお構いなしだ。

 何だか調子が狂っちゃう。

 椎名君が、私を好き?

 あれだけ私をからかって、遊んでいた彼が?

 ………解らない。頭で理解しようとしても、感情の方がついていかない。

 そんな素振りを見せたことなんて無かったじゃない。

 どうせきっと、また、悪い冗談なんだ。

 そう思考が行き着く頃には、私も何とか授業を進める心理状態に持ち込むことができた。